解 1章その5

梨花「それで・・・・・・沙都子は?」
羽入「もうすぐここに・・・・」

まさか……こんな世界に来るとはこの子も思わなかったでしょうね。
あの沙都子が、私の大好きな沙都子が………大好きな圭一を殺してしまうなんて。
こんな世界もある………なぁんて、魔法の言葉で割り切るしかない。
これが夢なら……そんな安っぽい思考はとうの昔に捨てたわ…。
目の前の現実を、私はただ受け入れるしかない。
それが……この長く、気の遠くなる様な時間を過ごしてきた私が学んだ事の一つでもある。
羽入「梨花・・・・・・・」
そんな顔をしないで。私は大丈夫よ。
私は古手梨花、北条沙都子の友人として……あの子に接するだけだから。
羽入「あぅ・・・ぁぅぁぅぁぅ・・・・」
心配してくれるのはありがたいけど、そんな心配は私に必要ないの。
梨花「黙って見てなさい。どんな世界のどんな沙都子だろうと、沙都子は私の大切な友人に変わりないのだから」


レナ「じゃあね〜梨花ちゃん」
魅音「また明日ー」

用事があるので、ボクは行けないのです。圭一によろしく言っておいてほしいのですよ。
こんなにも簡単に信じてくれるなんてね。ふふっ……。
そう、これが私の仲間達。私の大好きな仲間達。
こんなにも素敵な仲間達がいたから、私はこうして自分の運命を呪いながらも生き長らえている。
詩音「梨花ちゃま・・・・まだいたんですか」
梨花「沙都子を置いては帰れないのですよ」
詩音「・・・そうですか。私は帰ります。それじゃあ」
梨花「また明日、なのですよ」
………私は信じてる。仲間を…沙都子を。
沙都子「り、梨花! 早く帰りますわよ!」
羽入「梨花・・・・・・・・・・」
梨花「沙都子・・・どうしましたですか?」
……白々しいわね。全てを知っているくせに。
梨花「なんだか元気がないのですよ・・・・・」
理由だってわかってる。でも………それでも………。
梨花「沙都子はボクの友達なのです。でも・・・・」
あなたが自分の口で言うしかないの。例え私が知っていようとも。
梨花「圭一も・・・・ボクの友達なのです」
だから……話てほしい…私を信じて……信じてほしいから…。
梨花「・・・・・・・・・・」
沙都子「り、梨花ぁ!」
ありがとう沙都子……私を信じてくれて。
だから私も応えるわ。あなたの信頼に。
これが間違った答えなのか私にはわからない……。
梨花「沙都子・・・・よく頑張りましたですね」
でも……本当はこんな勇気なんて………私は認めたくない…。


沙都子「梨花・・・・私は・・・・・」

家に帰ると直ぐに、沙都子は自ら犯した自分の罪を語り始めた。
羽入「・・・あう・・・・ぁぅ・・・」
沙都子は勇気をふり絞って私に話している。
人を……友人を殺めてしまった罪を話す事にどれだけの
勇気が必要なのか………あなた達にはわかるかしら?
ふふっ……。わかったあんたは………経験でもあるの?
想像や憶測だけで……でしょう? 勘違いしないでほしいけれど、
それが悪いと私は一言も言ってはいないわ。
ただ……彼女の罪の重さを軽々しく口にしないでほしいだけ。
早い話が、沙都子の勇気を汲み取ってほしい。それだけよ……くすくす。
梨花「話はわかりましたのです。それで、沙都子はどうしたいのですか?」
沙都子「・・・・・・・・・」
……わからないって事か。まぁいいわ。
自分の罪をわかっているからこそ、私に話したのでしょう?
羽入「梨花は・・・・どうしますのですか?」
どうするもこうするも………そんなの決まっているわ。
梨花「沙都子、ちゃんと反省していますですか?」
沙都子「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・!」
そうね。今はそうやって謝る以外の方法が見つけられないのね。
そして、そんな沙都子を誰かが叱ってあげなければならない。
梨花「沙都子、どうして謝っているのか、自分でわかっていますですか?」
謝るなんて誰にだって出来る。口先だけの謝罪だけなら誰にだってね。
でも、その本質は違う。どうして謝まらなければならないのか?
その理由を…それを沙都子自身がわかっているのなら………私は許そう。
沙都子「わ、私は・・・・圭一さんを・・・・・・!・・そしてそれを・・ぁ・・隠そうと・・・した・・・・・・・みんなに・・・ぅぅ・・・うそ・・を・・・」
………もういい。もう充分よ沙都子。あなたはちゃんとわかっているのね。
安心なさい。あとは私がやるわ。
圭一には悪いけど……こんな世界もあるのよ。
それに……ここであなたにいくら謝ったって、あなたはもういないんだから…。
羽入「本当に・・・・本当にこれで良いのですか?」
聞かれるまでもないわよ。もう決めたの。
羽入「あうあぅあぅ・・・・・」
あんたのあぅあぅ語を訳すのも面倒ね。黙って見てなさい。
羽入「ボクは・・・梨花のやる事に何も反論はしないのです・・・・・」
あなたは傍観者。見ている事しか出来ないものね。
羽入「ボクは・・・・梨花に決断を促す事くらいしか・・・」
じゃあ黙って見てなさい。それに、あんただってわかってるんでしょう?
羽入「・・・・梨花は・・・この世界を・・・・もう・・・」
誰か一人でも欠けてしまっては駄目なの。
私は……そんな世界を望んではいないのだから。
羽入「次の世界に・・・期待するしかないのですよ・・・・」
そうね。私達にはその選択儀もあるわ。
でも………沙都子は……この世界の沙都子は……。
………少しくらい……抗ったってバチは当たらないわ…。
あの子が最後にどんな決断を下すか、それを見届けるくらい………別にいいじゃない…。

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