6章 その3

梨花「沙都子はとても元気そうなのです」
入江「表面上は、ですね」
梨花「・・・まだ危険なのですか?」
入江「まだ断定出来ませんが・・・・何故沙都子ちゃんがああも安定しているのか・・・理由がわかりませんからね」
梨花「・・・・圭一」
入江「その可能性は高いでしょうね。ですが答えを出すのは早計です。もう少し、様子を見ていましょう」
梨花「・・・・・もう少し・・・無理なのですよ・・・・」
入江「・・・梨花さん?」
梨花「入江は、信じてくれているのですか?」
入江「今夜、または明日、私が死んでしまうと」
梨花「・・・・・そうなのです・・・・」
入江「・・・・・以前の私なら、信じられなかったかもしれません。ですが・・・・」
梨花「では・・・!」
入江「はい。私は信じます」
梨花「入江・・・! 入江が信じてくれたのは、この世界が初めてなのです・・・・!!」
入江「・・・・まだ私には梨花さんの言っている意味がわからないものもありますが・・・・富竹さん、そして鷹野さんが殺されてしまった以上、私には信じる他ありませんからね」
梨花「・・・・今この話をしても大丈夫なのですか?」
入江「大丈夫ですよ。現在診療所には医療スタッフしかいません。安心してください」
梨花「・・・・まさか・・・山狗が・・・・・」
入江「最初は私も信じられませんでした。どうして彼等が・・・・」
梨花「山狗は入江達を守るために存在しているのではないのですか・・・?」
入江「えぇ、そうです。山狗の任務には入江機関に在籍している要人の警護も含まれていますからね」
梨花「・・・・ボクには難しい話はよくわからないのです」
入江「以前、梨花さんには話をしましたよね」
梨花「圭一を消したのは・・・・山狗」
入江「はい。今ならそう断言出来ると、私は思います」
梨花「・・・・・圭一・・・・」
入江「きっと・・・・前原さんは見つからないでしょうね」
梨花「・・・・・・・・・・」
入江「そして・・・・山狗の背後にはトーキョーとは別の、なんらかの組織が存在している可能性が高い」
梨花「・・・・・一体・・・どんな組織なのでしょうか・・・」
入江「・・・・わかりません。富竹さんが殺された今、それを私達が知る術は残されていません・・・・」
梨花「富竹・・・」
入江「そして鷹野さんも殺されてしまった・・・・あの時私が鷹野さんの気配に気付いていれば・・・!彼女は・・・・殺されなかったのかもしれない・・・!!」
梨花「・・・・そんな事はないのです」
入江「梨花さん? 何か言いました?」
梨花「な、なんでもないのですよ」
入江「そうですか・・・・富竹さんと鷹野さんが殺されてしまった・・・・証拠には充分過ぎます」
梨花「・・・・・・・・・・」
入江「だからこそ、私は梨花さんの言葉を信じています」
入江「山狗は軍人です。その軍人が、任務を放棄する所かまったく逆の行為をやってしまった・・・これは・・・」
梨花「入江、ボク達にはどうする事も出来ないのですか?」
入江「・・・・残念ですが。私には力が無いんです・・・何も」
梨花「・・・・・・・・・」
入江「ですが! 沙都子ちゃんの話は別です!きっと救ってみせます!!」
梨花「大丈夫なのです。ボクは入江を信じていますから」
入江「ありがとうございます」
梨花「・・・・気をつけてください。もし入江が死んでしまえば・・・・誰も沙都子を救えない・・・」
入江「はい。私は死ぬわけにはいきません。私は沙都子ちゃんを・・・・!」
梨花「入江・・・」


梨花「お待たせなのです」
レナ「あ〜遅いよ〜梨花ちゃん」
梨花「みぃ、レナは来ていたのですか」
沙都子「丁度梨花と入れ替わりになりましたの」
梨花「そうなのですか。レナ、沙都子のお守りは大変でしたか?」
沙都子「梨ぃ花ぁ!」
レナ「はぅ〜沙都子ちゃんのお守りなら、レナは喜んでやるよ! 沙都子ちゃ〜ん」
沙都子「むぎゅ! れ、レナさん・・・いたい・・ですわ・・・」
レナ「はうぅ・・・沙都子ちゃんのほっぺ・・・・ぷにぷにで・・・やわらかくて・・・・・」
沙都子「り、梨花ぁ! 見てないで助けてくださいましぃ!」
梨花「みぃ、二人の邪魔は出来ないのです。ボクはもう帰りますのですよ」
レナ「ばいばーい、梨花ちゃーん」
沙都子「うぎゅ! り、梨花ぁ、また明日ですわぁ〜」
梨花「はいなのです。また明日、なのですよ」


梨花「・・・・なに? さっきからうるさいわね・・・」
梨花「・・・・・・・・・」
梨花「それは私達だから、でしょう? この世界しか知らない入江が見当違いの予想を立てても、何もおかしい事はないわよ・・・・」
梨花「・・・・・・・・・・・・」
梨花「・・・で? 話せば入江はわかってくれるとでも言いたいの? ・・・・・呆れた・・・」
梨花「・・・・・・・・・・・」
梨花「無駄よ。こんな突拍子もない話を・・・・・あんたは信じられるの? 私はたくさんの世界を見てきたから言えます。富竹も鷹野は、どの世界でも綿流しの日に死んでしまいます、って・・・・」
梨花「・・・・・・・・・・」
梨花「・・・ふん、くだらないわね」
梨花「・・・・・・・・・・」
梨花「・・・・うるさいなぁ・・・!」
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