8章 その6

レナ「待ってー! 待ってよ沙都子ちゃーん!」
沙都子「あらあら、遅いですわよレナさん」
レナ「はぁっ・・・はぁ・・・・そ、そんなに急がなくても・・・いいと思う・・な・・・はぁっ・・」
沙都子「レナさんは魅音さんが心配ではございませんの?」
レナ「し、心配だよ! でも沙都子ちゃんの方がもっと心配なの!!」
沙都子「わ、私がですか?」
レナ「あっ・・・・えっと・・・」
沙都子「例えそうだとしても、私の知っているレナさんなら休まれた日の夕方には、直ぐにお見舞いへ行く筈ですわ・・・!」
レナ「・・・・それは・・・」
沙都子「レナさん・・・一体、どうしてしまいましたの?」
レナ「・・・・・・・・・」
沙都子「まただんまりですのね」
レナ「ごめんなさい・・・」
沙都子「別にいいですわよ。これなら会いに行くんですから」
レナ「・・・そう・・・・だね・・」
沙都子「・・・・・レナさん」
レナ「な、なにかな?」
沙都子「梨花は・・・・どうしましたの?」
レナ「梨花ちゃん・・・?」
沙都子「家にもいない・・・・学校にも来てない・・・梨花は一体、何処へ行ってしまったんですの・・・・」
レナ「り、梨花ちゃんは・・・・その・・・」
沙都子「ハッキリおっしゃってくださいまし」
レナ「・・・・・梨花ちゃんは・・・あの・・・・」
沙都子「ハッキリ! もっとハッキリなさいませ!!」
レナ「梨花ちゃんは・・・・その・・・」
沙都子「・・・・もういいですわ。レナさんには何も聞きませんから、それでいいですわよね?」
レナ「沙都子ちゃん・・・・・」
沙都子「今更、捜す人数が一人増えたくらいで弱音は吐きませんわよ。梨花も圭一さんも、きっと私が見つけてさしあげますわ・・・・!!」
レナ「・・・・ごめんなさい・・・!」
沙都子「別にいいですの。いずれわかるんでございましょう?それなら、自分の目で確かめますから気にしてませんわよ」
レナ「沙都子ちゃん・・・・レナは・・・・・・」
沙都子「・・・・なんですの」
レナ「や、やっぱり・・・・学校に戻ろ? きっと先生、怒ってると思うの・・・・だから、」
沙都子「まだそんな世迷言を言いますの?!」
レナ「はぅ・・・ご、ごめんね。でも・・・・・」
沙都子「・・・・よーくわかりましたわ・・・・・もうレナさんと話す事はありませんわ。さよなら」
レナ「さ、沙都子ちゃん! 待って!!」
沙都子「待てと言われて待つ人間が何処にいるとおっしゃいますのやら」
レナ「待って! 行っちゃダメなの!! お願い沙都子ちゃん! 戻って来て!!」
沙都子「・・・・私に余計な心配をさせたくないレナさんのお心遣い、ちゃんと私に伝わりましてよ。でも・・・・私はそんなものを望んでいませんの・・・!」

レナ「沙都子ちゃん・・・・大変だ・・・・・」
レナ「早く追い掛けないないと・・・!」
レナ「・・・・でも・・・沙都子ちゃんに追い付いて、何て言えばいいんの・・・・何て・・・」
レナ「・・・・・・・・・・・」
レナ「あっ・・・今は立ち止まって考えてる場合じゃない・・・! ダメ・・・・もっとクールに・・・・・・・落ち着け・・・落ち着け・・・・」
レナ「・・・・・・・・・ふぅ・・・・」
レナ「よーし・・・・!!」

沙都子「はぁ・・・・はぁ・・・」
沙都子「どうして魅音さんの御自宅はこんなにも玄関が遠いんでしょうね・・・・まったく、不便でなりませんわね・・・・はぁ・・・」
沙都子「・・・ん・・・はぁ・・・んん?」
沙都子「・・・・・門の前に車がたくさん泊まってますわね」
沙都子「何かの集まりでございますのかしら・・・?」
沙都子「・・・・・・・・・」
沙都子「・・・! 誰か出て来ましたわ・・・!!」
「ったく・・・・参ったなぁこりゃ」
「・・・そうっすね」

レナ「・・・・はぁ・・・はぁ・・・沙都子ちゃん・・・!」
レナ「はぁ・・・はぁっ・・・・」
レナ「・・・あ、あれ?」
大石「おんやぁ? 竜宮さんじゃありませんかぁ」
レナ「大石さん! ど、どうしてここに?!」
大石「それはこっちの台詞ですよぅ。私達はここでお仕事してるだけですからねぇ。んっふっふっふ!」
レナ「そ、そうですよね・・・・はぁ」
大石「竜宮さん? どうしたんですぅ? そんなに息を切らして・・・ここまで走って来たんですかぁ?」
レナ「えぇ・・・・まぁ」
大石「学校から? ・・・・まさか抜け出して来たなんて言うんじゃないでしょうねぇ?もしそうだとしたら、指導しちゃいますよぅ? んっふっふっふ」
レナ「そ、そんな事より! 沙都子ちゃんが来ませんでしたか!?」
大石「北条沙都子さん、ですか? いえ・・・・熊ちゃんは何か聞いてますぅ?」
熊谷「いえ、自分は何も」
大石「北条沙都子さんはここへは来られてないと思いますよぅ。もし彼女がここへ来たとしても、追い返しちゃいます。んっふっふっふ!」
レナ「そんな筈はありません! だって沙都子ちゃんはここへ来た筈なんです! だって・・・!」
大石「いいえ、来られてません。見ての通り、ここは門をくぐらないと中に入れない作りになってます。くぐった直ぐ先に何人か警官が立っています。彼らからは何の報告も受けていませんからねぇ」
レナ「そんな筈は・・・・」
大石「他に方法は無いと思いますよぅ? まぁ、この高ーい塀をよじ登って中に入ったんなら私達が気付かないのかもしれませんが。北条さんは小さな子供ですからね。考えられませんよ」
レナ「・・・・そんな・・・」
大石「実は中に何人か親族の方がいらっしゃるんですが、仮にあの方々が北条さんを見つけて、何処かでお茶でも飲みながらゆっくり談笑している可能性も考えはしましたが・・・・これは先ず無い」
レナ「北条家・・・・だから?」
大石「はい。それ以外に何がありますぅ? 忌み嫌われた北条家の人間を、園崎家の人間が家に入ろうとしている所を見つけたら・・・・大変な騒ぎになっちゃうかもしれませんからねぇ」
レナ「じゃあ・・・・沙都子ちゃんは一体・・・・・」
大石「また失踪なんて話になると面倒な事になりますねぇ」
レナ「め、面倒って・・・! 大石さんは警察でしょう?!面倒なんて・・・・言わないでください・・・・!!」
大石「すみません、失言でした。・・・熊ちゃーん」
熊谷「はい」
大石「こっちはだいぶ落ち着いてきました。何人か連れて熊ちゃんは北条沙都子さんの捜索をお願いします」
熊谷「了解っす!!」
レナ「大石さん! ありがとうございます・・・!」
大石「いえいえ、これが仕事ですからねぇ。んっふっふ!それに北条さんにはお聞きしたい事もありますので」
レナ「・・・そう・・・・・ですか・・・」
大石「竜宮さん、今お時間は頂けませんか?」
レナ「れ、レナは沙都子ちゃんを捜さないと、」
大石「大丈夫ですよ。聞いてたでしょう? これから何人かで彼女を捜索に行くと」
レナ「・・・・・・・・・」
大石「なっはっはっは! 大丈夫です。お時間はそんなに取らせませんから」
レナ「わかりました。でも、沙都子ちゃんは絶対に見つけて下さい。お願いします」
大石「えぇ、任せて下さい。絶対に見つけてみせますよぅ」
レナ「・・・・・・・・・」
大石「では、こちらへどうぞ。このやり取り・・・何回もやってますねぇ。んっふっふ」
レナ「そうですね」
大石「なっはっはっは! 怒らないで下さいよぅ」

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